発注に際してのお願い

特注飼料とは、実験目的によって作られる特別注文の飼料です。
ご注文にあたっては、以下の内容を事前にご一読下さい。

検体添加飼料について

他の飼料との交雑防止および作業員の安全確保のため、発注に際しては、検体の安全性や性状などをできる限り詳しくお知らせ下さい。
物性不明のものや物性の内容によっては、受注いたしかねる場合がありますので、予めご了承下さい。

  • 安全性(LD50 ・発癌性・皮膚刺激性など)
  • 性状(揮発性・粘性・融点・耐熱性・溶解性など)
  • その他(保存温度、吸湿性、着色性、臭気など)
  • 検体の性状などの秘密は厳守いたします。
  • 検体は原則として1%以上はすべて内割添加といたします。
  • LD50(経口、吸入または経皮)=500mg/kg以下の検体、発ガン物質および安全性に関するデータ不明の検体につきましては、
    作業員の安全のため、原則としてお断りしています。

配合濃度の指定について

検体あるいはビタミン、ミネラルなどの極微量配合の精度は、粉体の粒子の大きさに依存することが知られています*
どの程度まで均質に分散させ得るかについては、飼料原料の種類や検体の性状、さらには分析時のサンプルサイズにも影響されるので一概には決められませんが、目安として、天然飼料では0.01%(100ppm)、精製飼料では、0.001%(10ppm)以下の濃度については、均質分散が困難である旨、事前にご了承のうえ、担当者とお打ち合わせ下さい。当社飼料の混合実績については、下記の表をご参照下さい。
*実験動物飼料学序論(昭59):P196-197 ソフトサイエンス

検体添加飼料の混合精度実績
飼料 添加物質 指定濃度 分析濃度/[回収率] 調整月
(1)ウサギ用 コレステロール 0.5%
0.5%
0.49%
0.47%
96.09
(2)ウサギ用 コレステロール 0.67% 0.63% 96.11
(3)ウサギ用 コレステロール 0.67% 0.68% 95.03
(4)ウサギ用 コレステロール 0.67% 0.75% 97.02
(5)ラット用 検体A 50ppm
1000ppm
10000ppm
[90.0%~100.0%]
[100.8%~101.9%]
[100.6%~101.2%]
92.04
(6)ラット用 検体B 50ppm
1000ppm
10000ppm
[92.0%~102.8%]
[99.1%~101.6%]
[98.6%~101.0%]
92.08
(7)ウサギ用 検体C 0.001% 0.0006%
97.09
(8)ラット用 検体D 0.08% 粉末飼料[98.2%]
固形飼料[82.7%]
加水加熱で検体の飼料粒への吸着がおき、
抽出操作が不完全となった
95.05
(9)ラット用 NaCl
NaCl
6.0%
0.3%
Na2.3%(NaClとして5.8%)
Na0.08%(NaClとして0.2%)
97.01

(1)~(3)は比較的よく混合されている例ですが、(4)は充分な混合がなされていたか注意が必要です。
このケースでは、試験実施上問題なしとのご判断をいただきました。
(5)、(6)は良く混合されていると思いますが、50ppmの回収率のバラツキが他の濃度よりも大きいことに、注意が必要です。
(7)は飼料製造の観点からは、極微量のレベルに相当する量で、当社としてもこのレベルでの精度確保は非常に困難である旨、
お客様にはご理解を求めております。 (8)は、飼料調整前には不明であった検体の物性によって、期待値と異なったケースです。
これらの結果から、飼料への物質添加は、0.01%(100ppm)付近を目安にして、混合精度の分岐点があるようです。

 ▲Top

飼料中原料のご照会および配合証明について

配合案設計または外部提出用資料などのため、お客様から当社一般飼料(MF、CR-LPF、CRF-1、LRC4など)中の使用原料の種類や配合量についてご照会いただく場合もございますが、製品の秘密保持上、原則として回答いたしかねますので、ご了承下さい。
特別の事情により、上記の情報を必要とされる方は、事前に当社担当者にご相談下さい。
使用原料の種類と量が明示された飼料での試験をご希望の方は、NIH公開飼料、各種精製飼料または、当社と協議の上決定された指定配合飼料のご利用をお勧めしておりますので、一度当社担当者にご相談下さい。

栄養成分含量について

ご希望のお客様には、ご注文いただいた飼料の栄養成分含量を日本食品標準成分表、日本標準飼料成分表、自社原料・製品分析平均値などに基づいて計算し、ご提示いたします。
ただし、実際の分析値と若干異なる場合がありますのでご了解下さい。また、成分によっては分析値例の記載がないため、計算不能の場合もありますので、事前にご照会下さい。
なお、指定栄養素等の分析については、実費にて承りますので、当社担当者にご相談下さい。

原料、検体の二次加工について

当社で使用する原料や、お客様から供給された原料・検体の二次加工(精製・抽出・蒸留・濃縮・分離等)は、原則としてお受けしかねますので、ご了解下さい。

精製飼料の保存および飼料中の油脂の酸化について

抗酸化剤を添加していない精製飼料は、他の飼料と較べて油脂の酸化が起こりやすくなっています。
また、飼料を固定化した場合、更に酸化・過酸化は促進されますがこのときの酸価(AV)、過酸化物価(POV)など、食品の分野で用いられる油脂の品質の指標としての値をみると即席油揚げ麺と同程度ですので、必ずしも有害だというわけではありません。従って油脂の種類や添加量にもよりますが、精製飼料は10℃以下の冷暗所に保存し、製造後3ヶ月以内程度に使い切られるようなご計画で発注いただくようお願いいたします。
また、精製飼料をガンマ線照射される場合は、上記の場合以上に油脂の過酸化が促進されます。
過酸化の程度はロット毎に変動がありますことを充分ご理解の上、照射の有無をご決定いただくようお願い申し上げます。

AIN-93G(粉末)の品質に及ぼすγ線照射の影響と室温中での保存性 ND:検出せず
保存月数 非照射 30kGy 50kGy
0 1 2 3 0 1 2 0 1 2
ビタミンA効力 IU/100g 400 370 400 330 370 370 270 470 270 300
ビタミンB1 mg/100g 0.58 0.44 0.31 0.24 0.54 0.35 0.23 0.53 0.39 0.21
総トコフェロール mg/100g 11.2 10.3 9.3 9.1 7.5 7.3 7.6 7.0 7.3 7.4
α-トコフェロール 6.7 6.6 6.5 6.6 6.4 6.4 6.6 5.9 6.3 6.4
β-トコフェロール ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND
γ-トコフェロール 3.1 2.5 1.8 1.6 0.5 0.4 0.4 0.5 0.5 0.4
σ-トコフェロール 1.4 1.2 1.0 0.9 0.6 0.5 0.6 0.6 0.5 0.6
酸価 1.36 1.30 0.98 1.25 0.98 1.48 2.04 1.21 2.05 2.13
過酸化物価 meq/100g 15.3 25.7 36.5 52.2 21.1 19.7 18.5 13.6 9.5 11.2

γ線照射直後は、トコフェロール(ビタミンE)が若干減少しますが、おおむね非照射と同レベルの品質が維持されていると示唆されます。また照射の有無に関わらず、保存期間の経過に従って、ビタミンAおよびEの微減が認められましたが、特にビタミンB1の減少が顕著でした。これは添加されたビタミンB1塩酸塩そのものの安定性によると思われます。

酸価は照射直後は影響ないものの、保存期間経過に従って増加する傾向が認められました。
過酸化物価も酸価と同様に、照射直後の影響はないものの、保存期間経過に従って、非照射では増加傾向でしたが、照射処理をしたものでは逆に減少傾向を示しました。しかしこれは、照射飼料は気密性の高い包材で包装され、しかも脱酸素剤を封入していることから酸化の抑制がおきた可能性、また照射により、生成した過酸化物の酸化が更に進み、過酸化油脂重合物、あるいはより低分子のカルボニル化合物となったため、見かけ上の値が減少した可能性などが考えられ、一概に照射処理の優位性を示すものとはいえないと考えられます。

1995年版NRC飼養標準によると、ラットのビタミンB1要求量は、理論的な成長度を示すための量として、0.4mg/100gが提案されています。この量は、欠乏症状を起こすか否かの域値を示すものではないことは、文脈から明らかです。
従って、食糞の影響並びに、油脂の変化状況も合わせて考えると、以上の結果から見る限り、精製飼料の使用期限の目安は約3ヶ月程度とお考えいただきたいと思います。

AIN-93G精製飼料の油脂変敗におよぼす抗酸化剤

  • tert-Butylhydroquinone(TBHQ)の効果について

精製飼料製造時にしばしば問題となる油脂の酸化変敗について、AIN-93G配合を用いてそれに標準的に配合されている抗酸化剤tert-Butylhydroquinone(TBHQ)の添加効果を確認しました。

[方法]

標準のAIN-93G中には、TBHQが飼料中0.0014%、すなわち油脂に対して0.02%添加されています。
この量を基準として、×1、×2、×5、×10倍量のTBHQを添加した固型飼料を調整し、標準品の粉末飼料の場合と比較しました。測定項目は、飼料中の油脂の過酸化の程度の指標となる過酸化物価(POV)、過酸化が更に進行して生成する、POVでは検出できないケトン、アルデヒドの量の指標となるカルボニル価(CV)の2項目を測定しました。
飼料は同一日時に調製し、加水条件、乾燥条件は、すべての飼料について同一条件になるようにしました。

[結果]

表1および図1にPOV、CVの測定結果を示します。
即席麺類、揚げ菓子類のPOVの上限目安は30程度とされています。
今回、対照とした粉末飼料はそれよりも低く、非常に良好な状態であることが示されました。
一方、固型飼料は標準濃度のTBHQで既に粉末飼料の10倍のPOVを示していました。この程度のPOVでは、毒性を発現する心配はほとんどありませんが、保管条件によっては、自動酸化が進行して、使用期限の短縮を余儀なくされるケースも出てくると思われます。TBHQの添加効果は、濃度に応じて認められ、×2量で通常の天然飼料と同レベルとなることが認められました。

この結果により、固型飼料のPOV上昇の主原因は成形作業に係わる加水、乾燥工程にあることが強く示唆されます。CVの変化については、POVと同様の傾向を示しました。今回の結果は、固型化により油脂分解の進行はあるものの、問題のないレベルの範囲内の変動であると考えられます。
TBHQは日本ではまだ食品添加物として認められていませんが、米国その他の国ではすでに許可されています。
TBHQのラットに対する毒性については、700mg/kg体重で毒性は認められないとの報告があり、今回の×10区の量でも、その1/10に満たないので、安全性については充分であると考えられます。

表1
TBHQ添加量
X 1
粉末
X 1
固型
X 2
固型
X 5
固型
X10
固型
POV mEg/kg 3.4 30.7 18.9 10.3 7.3
CV abs 440nm 2.7 8.5 7.6 4.4 3.7
図1

TBHQ添加量

飼料の形状について

原則として特注飼料は粉末です。固型化が必要な場合は事前にお申し付け下さい。
ただし、配合内容により固型化が不可能な場合がありますので、あらかじめご了承下さい。
例として、下記に成型困難な配合例を示します。

  • 油脂添加量が液脂7%、または固脂10%以上のもの
  • セルロース粉末などの繊維源添加量が10%以上のもの
  • シュークロース、フルクトース、グルコースなどの非デンプン性炭水化物の配合量が15~20%以上のもの(同時に褐変も生じ易くなります)
  • 非粘結性の検体を20%以上配合した天然飼料

また、お客様から供給された物性不明の原料については、製造時に固型化が不可能であることが判明する場合も ありますので、あらかじめご了承下さい。 なお、固型化に際し、ロスが生じますので下表の必要量を目安にご発注をお願いいたします。

受注量(kg) 仕込量(kg) 受注量(kg) 仕込量(kg)
10 17 60 70
20 30 70 80
30 40 80 90
40 50 90 105
50 60 100 115

文献などを参照して配合を指示される場合

内外の文献などに記載された飼料を指定して配合を指示される場合、配合表の部分の写しだけではビタミン・ミネラル等の微量原料の組成が不明であったり、当社で若干の改変を行う際、試験目的に極力適合する代替原料を選択する必要から、できる限り全文の写しを添えてご指示下さい。また、お持ちの文献からでは配合内容の全容が確定できない場合、栄養学的に不備のないような配合を提供させていただきます。期待される試験結果を保証できかねますことをあらかじめご了承下さい。

納期について

正式受注後約2~3週間で納品いたします。(多少の遅延はご容赦下さい)
γ線照射滅菌をご希望の場合は、納品までに更に1週間程度必要となります。

受注単位

ご注文は、精製飼料の場合は、一種類5kg以上、それ以外の飼料の場合は一種類10kg以上でお願いいたします。
少量ご入要の場合には、ご相談下さい。

ビタミン・ミネラル無添加飼料(いわゆる欠乏飼料)について

本飼料を用いて試験をされる場合は、症状の発現時期や程度に差が見られることがあります。このような場合、以下の点をご注意下さい。

  1. 原料由来のビタミン・ミネラルは除去できません。
  2. 実験に使用する前の飼料などによる体内蓄積
  3. 食糞の有無や飼育環境
  4. 腸内細菌のビタミン合成能
  5. 飢餓症状との区別(一般に欠乏症状が進行すると、摂餌不足から全身的な栄養失調になり易くなります)
  6. 他の栄養素との相互関係(例:トリプトファンとニコチン酸、カルシウムとリンなど)

配合設計のヒント

高脂肪飼料
他の栄養素についても同様ですが、高(または低)脂肪飼料に明確な定義があるわけではありません。
従って、試験計画上、設定した対照飼料の脂肪含量に対して高い(または低い)脂肪含量の飼料は、便宜上、高(低)脂肪飼料として差し支えないことになりますが、目安として、飼料中の脂肪カロリー比が50%以上のものを高脂肪飼料とする、としている成書*もあります。
ちなみに通常のマウス・ラット用飼料の脂肪カロリー比は10%前後です。
*小動物を用いる栄養実験(昭55):P157、第一出版

製品に関するお問い合わせ飼料/飼育機器